Declaration

読書と映画。その他のこと。

2017.8.13読了。 独立記念日/原田マハ 978-4-569-67913-6

 

独立記念日 (PHP文芸文庫)

独立記念日 (PHP文芸文庫)

 

 

同僚に、Y子ちゃんという女の子がいる。仕事に誇りを持ち、役目を全うし、納得するまで引き下がらない。彼女の凛とした、飾らず、時に潔癖とも思える生き方に、私は眩しさを感じずにはいられない。そんな彼女が、私に勧めてくれたのは、原田マハさんの小説だった。

 

独立記念日』は24の小説が連なった短編集だ。各々の主人公たちは、小さな「独立」を果たしていく。漫画家を目指す少女、トップキャスターを退いた女性、上ったバベルの塔が崩れ落ちちゃったキャリアウーマン。彼女らは、どこにでも居そうな女の子だ。弱く、優柔不断で頼りない。それでも。時に揺らぎながら、迷いながら、それでも独立していく。

 

仕事もうまくいかず、馬鹿な男に捕まって、いろんなことがうまくいかない。自分腐ってるなぁと思っていた時に出会ったのがこの『独立記念日』だった。ふと書店に立ち寄った先、あの彼女が勧めてくれた作者だと思い立ち、平積みされていたこの小説を手に取った。タイトルに惹かれた。独立できるかも、とそう思った。

 

貴方も読めばもしかしたら思うかもしれない。この不自由な現実から独立したいと。少なくとも私は思った。閉塞感を抱えながら、年だけ取って、大好きだけどうだつの上がらない彼と会うたび、好き同士のはずなのに、ただ漠然とした不安を塗りつぶすみたいに、心をすり減らす。こんな日常なんて、馬鹿みたい。こんな生活に終止符を打ちたい。タイトルを見て、本を手に取り、すぐに、「(きっと)読み終えたら、彼と別れよう」そう決めていた。

 

結局、それを待たずに別れ話を持ち出し、さよならをして、読了を待たずして、また会ってしまう羽目になるんだけど。現実は全然甘くない。だけど、独立しきれない私に、独立したい思わせてくれた一冊。独立しきれない私に、未だ背中を押してくれる一冊。私は、彼から独立したいのだ。まだできていないけど。

 

私が手に取った文庫版の表紙には、美しいゴッホの絵が掲げられている。決して華美ではないけれど、美しい画。結局、まだ彼ときちんと別れることはできていないけど、ちょっとずつでも独立していきたい。幸せになりたい。私の独立記念日はまだこないけど、宣言を先に。そんな思いを込めてブログをはじめる。読書と映画と、その他のこと。